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インタビュー

大切なことを見つめつづけて(前編)

2019.01.26

樹木医/宮田義規さん

 学校を卒業して、社会人になって、当たり前のように働いて。なんの問題もないようだけど、本当このままでいいんだろうか?なんて考えてしまうことが、私自身にもありました。でも実はその「何か」を見つけることより、問題に向き合って悩んだ時間の方が、のちのちとても、大事なものになったりするんですよね。

 今回お話を伺ったのは、県内最年少樹木医として活躍する宮田義規さん。宮崎大学大学院森林草地環境科学専攻」を修了後、香川県の造園会社で修行。平成27年に樹木医の資格を取得し、現在は田野町に「悠(はるか)樹木医事務所」を構えられています。樹木医というお仕事をされている人に出会うのは、今回が初めてです。どんな経験を経て、どんなことを考えて、この少し特殊なお仕事を目指されたのでしょうか? 

 前編は、宮田さんの今のお仕事のこと、自分なりの働き方を見つけるまでの葛藤について、お届けします。

【樹木医/宮田義規さん】

自然と人のいい関係

小さい頃から植物が好きだったという宮田さん。温和で一生懸命、飾らない人柄で、私の疑問にもまっすぐに答えてくれました。驚いたのが、「『生きる』と『死ぬ』が一緒になっても、生きてる部分が死ぬそぶりを見せないんです。」という言葉。まるで哲学のようですが、これ、木の話をされているんです。この言葉を聞いただけで、どれほど植物のことを深く考えているのか、とてもよく伝わってきました。

「これからの時代に備えて、農業の勉強をした方がいい」という父親の助言で農業の道に進み、その過程で樹木医という仕事に出会った宮田さん。どんなお仕事なのか質問してみると、樹木と人間の付き合い方が少しづつ変わってきていることを教えてくれました。

「最近では、病気になった木に対して、すぐに外科手術をするのではく、木が持つ自己治癒力を上げるための処置をする手法が主流になってきています。どうすれば元気になっていってくれるのか、長い時間をかけて観察し、状況を見極めた上で最善の処置をしてあげる。観察力や知識量が重要になる仕事です。僕はまだ30代なので、分からないことがあれば先輩たちに聞けばいい。いろんな人が応援してくれて、知識を分けてくれる。それも若手の特権だと思います。最近では剪定講習会の講師などもさせていただいていて、『先生、うちの木が最近調子悪くて……』という相談に乗ったりもしています。先生、先生って、植物のことで頼ってもらえるのも、嬉しいんですよね」

 再開発などで施設建設の計画が着々と進められる中、今後はそこに付随するまちづくりのための植物が必要になってくると語る宮田さん。宮崎の景観まちづくりアドバイザーとして、街の緑を守る活動もしています。

「植物の役割には、もっと可能性があると考えています。新しい建物ができて、そこに緑のある空間を作るのであれば、ただ木を植えて終わりということではない。人が暮らしていく中で、その生活に沿ってデザインが作られていくわけなので。例えばですが、菜の花を観賞用として植えるだけではなくて、摘み取った菜の花でオイルを作ってみるとか。花壇に食べられる植物を植えてみてもいい。もしそういうことができたら、その地域の人やそこに訪れた人たちも、楽しくないですか?もっともっと、人の生活を巻き込んだものであっていいと思うんです」

若いうちに「悩みきる」こと

迷いなく農業の道を邁進していた宮田さんですが、大学卒業間際に、壁にぶつかったそうです。「自分が本当は何をしたいのか?何をするべきなのか?」一人で考えるだけでは答えが出ず、屋久島を歩いて縦断する旅に出ます。電車で会った人や道を歩いている人に、「今の仕事はどうやって見つけたんですか?」と話を聞かせてもらうという一風変わった旅。印象的だった出来事は?と聞くと、意外な答えが返ってきました。

「『結婚して家を守るのが男の役目だ』という言葉が一番心に残りましたね。もちろんそれは素晴らしいことだけど、その時の自分には反面教師のような言葉になりました。今家庭を持ってみて、その意味はとてもよく分かります。でも自分が何者かもわからない若者が、家庭というものを想像するのは難しかった。だからやはり、『自分とはこういう人間なんだ』という、確固たるものが欲しかったんですよね」

 とにかく歩き続けて、働くことの選択肢にどんなものがあるのか、文字どおり自分の足で、情報を集めました。言われるまま父親に示してもらった道をひた走ってきましたが、その選択はしっかりと、自分のものになっていきます。

「あのまま何も考えずに過ごしていたら、今でも別の道や可能性について、考えてしまっていたかもしれない。散々悩んで、人にも話を聞いて。それで出した結果だから、自分なりに覚悟を決められたんですよね」

 樹木医のお仕事についてもひとしきり教えてもらいましたが、実際にはどんな作業があるんだろう? と気になって、作業風景を見せて欲しいとお願いしました。庭先にある作業場へ出ると、お客さんから注文のあった青竹だけを使った竹垣を作るため、貯水タンクに貯めていた雨水を使って、竹を磨きます。こんな小さなこだわりからも、「雨水ってびっくりするくらい貯まるんですよ!」と楽しそうに話す宮田さんの、自然に向き合う姿勢を知ることができます。

大切なことを見つめつづけて(後編)へ続きます。

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