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インタビュー

大切なことを見つめつづけて(後編)

2019.01.30

樹木医/宮田義規さん

 

 学校を卒業して、社会人になって、当たり前のように働いて。なんの問題もないようだけど、本当このままでいいんだろうか?なんて考えてしまうことが、私自身にもありました。でも実はその「何か」を見つけることより、問題に向き合って悩んだ時間の方が、のちのちとても、大事なものになったりするんですよね。

 今回お話を伺ったのは、県内最年少樹木医として活躍する宮田義規さん。宮崎大学大学院森林草地環境科学専攻」を修了後、香川県の造園会社で修行。平成27年に樹木医の資格を取得し、現在は田野町に「悠(はるか)樹木医事務所」を構えられています。樹木医というお仕事をされている人に出会うのは、今回が初めてです。どんな経験を経て、どんなことを考えて、この少し特殊なお仕事を目指されたのでしょうか? 

後編は、宮田さんが思う植物の美しさや、これからの時代の樹木の役割についてお届けします。

やっと見つけた「求めているもの」

 農業について高校から大学まで学ぶうちに、宮田さんは理想とのズレを感じ始めていました。幼い頃から身近にあった植物が、少し前の時代のように自分たちの生活に寄り添ったものではなくなってしまっていることに、淋しさを感じたそうです。自然が循環していない、しかしどうすれば循環していくのか分からない。農業を通して自然環境について考え続けたからこその疑問でした。自分が求めているものを知るため、大学院へ編入学することを決めます。

「人の生活と、樹木や植物とのサイクルを取り戻したいのだと、学校で学ぶうちに気づいたんです。大学院に入ってからは、山がCO2をどれだけ吸っているかを調査していました。それがきっかけで木に興味を持ち、樹木医を目指すようになったんですよね」

 『自然を循環させること』についてもう少し聞いてみると、薪ストーブの話をしてくれました。目先の便利さだけで完結しない、薪を使って暖をとり、お風呂を沸かし、ご飯を炊いていた時代。遠い昔のようで、意外と最近のことだったりします。その時代に戻ることで、生活がより豊かになるのではと宮田さんは続けます。

「いつからか石油などの資源を輸入し出して、木を山から切出さなくなり、燃料としては誰も使わなくなりました。でもそれって、自然の循環の輪を止めてしまっていることになるでしょう。庭師の仕事で、僕が作る庭を見た人ほとんどの「和風だ」と言います。それは身近な素材を使って表現をしているから。輸入などに頼らず、身近にあるものだけを使って庭を作るんです。そこに住む人間と自然が共存して、無駄なく循環していく時代に、戻ればいいなと考えていて。景観のためというのももちろんですが、再生可能な生物資源という視点からも、これからの時代、緑は必要不可欠なものになってくると思います」

 

変わらない、好きだという気持ち

 私が「全く別の仕事をしたいとは思わなかったのですか?」と聞くと、少し驚いたように「ああ、それは全然なかったなぁ。」と返ってきました。手のひらに乗るほどの鉢に植わった小さな木をいくつか手に取ると、植物の魅力について語り始めます。ご自宅兼事務所の玄関の側には、切り株や苔むした小さな鉢がいくつも並んでいました。その横顔には、ワクワクとした表情が浮かんでいます。

「やっぱり、植物ってすごく面白いんですよ。何が面白いって、とにかく生命力がすごい。(小さな木の鉢植えを見せて)この木、この部分は死んでるんですけど、この部分は生きてるんです。『生きる』と『死ぬ』が一緒になっても、生きてる部分が死ぬそぶりを見せない。植物には分化全能性といって、細胞一つから自分全体を再生できる力があるんです。その生命力の凄さですよね。(鉢の土面を指して)根っこの、この躍動感とか、すごくないですか?止まっているけど、動きに躍動感がある。自分がこの鉢の地面に立っている小人だとしたら、この木の幹のうねりが、すごくかっこいいと思うんですよ。パーツで死んでいたり生きていたり、それって植物特有の在り方だから。かっこいいなぁ、おもしろいなぁって。知れば知るほどに思いますね」

 その横にあった、手のひらサイズのイチョウの木も見せてくれました。「このサイズで7、8年経ってるんです。環境が悪いので、葉も落ちてこの大きさにしかならないのですが、これも立派なイチョウなんですよ。」と話す宮田さん。大きな木だけではなく、庭先の小さなイチョウの木まで大切に育てられていることで、植物を単なる『仕事として』だけ見ているわけではないということが、とてもよくわかります。

 好きだという気持ちや、大切だと思う気持ちは、20代での葛藤があったからこそ、今も迷わずに持ち続けられるのかもしれません。私が何気なく見ていた街の樹木も、宮田さんに楽しみ方を教えてもらったおかげで、これまでとは違う見方ができそうな、そんな楽しい予感がしてきました。

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