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インタビュー

「面白い」を追求し続けたい

2019.02.13

プロデューサー/株式会社ホリプロ 平部隆明さん

 『忘却のサチコ』や『家族八景』など、数々のドラマや映画を手がける、株式会社ホリプロのプロデューサー平部隆明さん。今回の取材は、ドラマや映画好きの私にとって、数々の作品を手がける平部さんのお話が聞ける、夢のような時間でした。とても気さくにお話しをしてくださる方で、取材の終盤には、私が好きな漫画が実写化された映画についてなど、色々とお話を聞いてくださいました。

 私たちは、テレビやインターネットを身近な存在として育ってきた世代。しかし、その身近な存在をつくる人たちの思いを知る機会は、ほとんどありません。制作の現場は、沢山の人たちが関わり、長い時間をかけて作り上げるドラマや映画の仕事ってどんな業界なのだろう?私は心躍らせながら、平部さんにお話しをお伺いしました。

 宮崎で過ごした学生生活のお話や、テレビプロデューサーとして、映画やドラマ制作の現場で経験してきたこと、制作する作品への思いなどのお話をお届けします。

【プロデューサー/株式会社ホリプロ 平部隆明さん】

宮崎市生まれ。江平小→宮崎大学附属中→宮崎西高卒。

株式会社ホリプロ映像事業部で、主にドラマ・映画のプロデュースを手掛ける。近作は、ドラマ「忘却のサチコ」「聖☆おにいさん」「僕たちがやりました」「イノセント・デイズ」「ふたがしら」「サイレーン」、映画:「泣き虫しょったんの奇跡」「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」など。

物足りなさを感じていた学生時代 

 「ドラマや映画をつくるプロデューサーという仕事自体が宮崎には無いので一見遠い存在ですが、ここで育った時の経験は今につながっています」と話す平部さん。どんな学生時代を過ごしていたのでしょうか?

「レコードショップや本屋に行っても、欲しいものが置いてないし、洋服屋は少ないし、情報が少ないことへの悶々とした気持ちが常にありました。ただ、物足りなさを感じて過ごした学生生活の中でも、今につながっていることはあります。例えば、中学時代に読んだ小説を不思議と憶えていたり。10代で面白いと感じたことは、意外と忘れないんです。その中の一つに、筒井康隆さんの『家族八景』という小説があります。のちに堤幸彦監督でドラマ化したのですが、学生時代に出会った小説が仕事につながることもあるんです」

 平部さんが宮崎を離れたのは18歳。大学進学を機に上京することに。当時は、クラブで音楽イベントを主催するなど、好きな音楽を楽しむ日々を過ごしていました。地元を離れたことで、出会う人の数や情報量が圧倒的に増えたそうです。大学を卒業し、はじめは好きな音楽の仕事に就こうと、考えていたという平部さん。なぜプロデューサーという仕事を選択したのでしょうか?

「大学時代は遊んでばかりで就職の準備なんて全くしてなかったんです。クラブでイベントをやったりしていた流れで、レコード会社から話もありました。しかし、その時レコード会社の方から『これからは映像の時代だよ』と言われたのをきっかけに、宮崎出身の方がやっていた小さな映像制作会社に入社しました。当時を知る人は、今、私がドラマや映画の仕事をしているのは意外でしょうね」

つまらないより、面白い方が絶対いい

 制作会社に入社した平部さんがはじめに担当したのはバラエティ番組でした。平部さんが入社した制作会社は社員が少なかったので、必然的に一人が担当する役割が多く、常に新しい事を吸収し体験できる環境だったそうです。当時の経験が今のプロデューサーの仕事力へとつながっているのでしょうか?

「『どんなドラマや映画を見るんだ?』と、社長に聞かれて。当時は、ドラマや映画はほとんど見てなくて、テレビを見てもビートたけしさんのバラエティ番組くらい。それで、そのまま答えました。その会社はドラマと映画制作がメインだったのですが、たまたま子ども向けのレギュラー番組(「大竹まことのただいまPCランド」)があったので、そのADになりました。初めて経験することだらけで、毎日が想像を絶する忙しさでした。映像制作はジャンルによって仕事の仕方が全然違うんです。映画やドラマと、情報番組やバラエティは全く別物。20代でバラエティや映画、情報番組と、幅広いジャンルの制作現場を経験できたことが、今に生きていると思います」

 20代のうちに、多くの現場と撮影のパターンを経験してきた平部さん。現在は、ドラマや映画の統括的立場のプロデューサーとして活躍しています。企画立案に始まり、キャスティング&スタッフィングから予算管理まで、視聴率や興行収入を見据えながら、作品全体をディレクションしています。プロデューサーという仕事には、その人の好きなものや様々な経験をしてきたことが、作品の面白さにつながっていると感じます。作品を統括する立場として、平部さんが心がげていることがあるそうです。

「ドラマや映画に限らず、コンテンツには全く同じものは一つも無い。だからこそ、作り手の経験や想いがコンテンツの個性になると思います。この仕事は楽しいことも多いですが、その何倍も大変です。そんな中で私が一番嫌なのは、自分が作るものがつまらないこと。だからこそ面白いことのために妥協はしたくないんです。ただ、独りよがりにならないようにいつも気をつけています。あくまでもコンテンツは見てくれる人たちのものですから」

迷ったら失敗してもいいからやってみる

 平部さんのお話を聞いて、新しい経験をする中で、迷いながらも面白いことを素直に追求し楽しんでいると感じました。どうしたら自分に素直に好きなことを追求し続けることができるのでしょうか?

「私の場合は、才能も実力もないのに縁と運に恵まれてきたと思います。20代前半でこの職業を選択した時、今もこうして同じ仕事を続けているなんて想像すらできませんでした。ささやかなことにこだわり続けたら今になっていたという感じです。その原点は10代の宮崎での経験で、何年経っても本質は何ら変わっていません。一つ私から言えることがあるとしたら、迷ったら絶対やった方がいい。諦めさえしなければ、失敗だっていつかいい経験になります。それでも悩んだら人に相談する。一番大事なのは、自分に忠実に「楽しむ」気持ちだと思います」

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