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ひと

2019.04.01

インタビュー

自分の強みを生かせる イラストレーターという道

イラストレーターって、絵を描くことが好きな人にとって憧れの存在
雑誌、ポスター、本、広告などに、イラストを描く仕事なのかな?と
なんとなくはわかるけど、実際にどんなことをしてるのか知らない
ただ絵を描くことが好きだと思っていても
自分がいざ目指せるのかと考えた時
どうしたらいいのかわからなかった
どんな選択をすると好きを仕事にしていけるのだろう?

 

好きなことに向き合った学生時代


力強い線にやわらかい表情のクマのモチーフ。うちに秘めた強さのなかに優しさを感じるそのイラストたちをみていると、自然と顔がほころびます。数年前、偶然手に取った雑誌の表紙を描いていたのが、宮崎県出身のイラストレーターオカタオカさんと知った時。地元が一緒だと勝手に親近感がわき「いつか会えたらいいな、お話できたらいいな…」と考えていたことが現実に。私は、心をおどらせながらオカタオカさんに会いに行ってきました。

なぜ、いつかお話を聞きたいと思ったのか。それは、イラストレーターに憧れた時代が私にもあったからです。皆さんにも学生時代に将来の夢を考える経験があると思います。そんな時に「イラストレーター」と、書いていたあの頃。どんなお仕事なのか?美術系の学校に行かないと駄目なのか? 宮崎に住んでいながらもできる仕事なのか? と、私はなんとなく諦めてしまったんです。
誰にでも訪れる、人生の選択肢を決める時。オカタオカさんは、どのような想いで自分の将来を選択してきたのでしょうか?
「小さい頃から絵を描くことが好きでした。高校生の頃に美大を目指すようになった時から、なんとなく将来は、そういう道に進もうかなと思っていました。高校3年生でラグビー部を引退後、受験対策のために美術部へ遅すぎる入部をしました。受験までの時間も少なく、デッザンなどの実技が伴わないのでは、という焦りがありました。その後、案の定、現役ではすべての美大に落ちてしまって、浪人して宮崎公立大学へ進学しました。当時は自暴自棄な部分もあって、これでいいかなみたいな気持ちになっていました」
目標を見失った時、好きなことを続けるって想像以上に難しい。私たちはなぜだか簡単な方、面倒ではない方を選んでしまいがちだと思うことがあります。しかし、大学生時代のオカタオカさんはエネルギッシュな行動派!だったんですよね?
「バックパックを背負ってインドやタイへひとり旅に行き、様々な土地に足を運びカルチャーに触れる日々を過ごしました。この時には、自分でもよくわからない何かに対しての気持ちが、芽生えていたんです。学生の時、とにかく早く宮崎を出たいなと思っていました。早く東京に行ってみたいと。今思えばそれがいいも悪いもないのですが、地元に就職をして、仕事とは別で空いた時間に、好きなことだってできて。みんなそれぞれ頑張っているのに、当時はそうは思えなかったんです。まず安定があって、そこまで外に刺激を求めていない姿に嫌だなと思うこともありました」

物足りなさを感じていた地元

生まれ育った場所を離れて、刺激のある毎日を送りたい。そう思いながらも自分らしく楽しみながら、大学生活を送っていたオカタオカさん。そんなある日、もう一度デザインの世界へ一度踏み出す、転機が訪れたそうです。
「大学3年生くらいから、またデザインの道を意識し始めました。大学のゼミの先生が、若い時に桑沢デザイン研究所で授業をしていたことを知って。また偶然にも同じゼミに大学卒業後に桑沢へ入学した1つ上の先輩がいたんです。その先輩が宮崎に帰省している時は、桑沢の話を聞いていました。大学を卒業してから、ここでもう一度デザインを学ぼうと思ったんです」
大学卒業後、東京都渋谷区にある桑沢デザイン研究所に進学。念願のデザイナーへの道を歩き始めます。地方に比べて圧倒的に人が多い環境で、個性や知識のある人に出会う機会が増えたことでの葛藤はあったのでしょうか?
「桑沢デザイン研究所に入学してから、視野が一気に広がりました。正直、宮崎にいた頃は、自分はセンスがいいと信じて疑わなかったんです。絵を描くことが好きで、音楽が好きで、旅が好きで。カルチャーが好きで、デザインの世界に興味を持っていました。でも当時の僕は、周りのクラスメイトが休み時間に話している『どんなデザイナーやイラストレーターが好き?』という話題に全然ついていけなかったんです。今考えると、よくそれでその道に進もうと思ったなって思うんですけど、『デザインって何?』みたいな感じになってしまったんですよね」
絵を描くことが『好き』という気持ちにまっすぐに、『好き』を仕事にする選択をしたオカタオカさん。専門学校を卒業後、2011年よりイラストレーターとして独立。ずっとデザイナーを目指していたオカタオカさんが、イラストレーターとして活動を始めたきっかけが知りたいと、言葉にする前に、私の思いが伝わったのか、当時のことをゆっくりと思い出しながら教えてくれました。
「桑沢の1年生の終わり頃から、『デザイナーになりたい』から『イラストレーターになろう』と心境の変化がありました。当時、課題を制作する際、自分のイラストを使ってデザインをしていました。その時、イラストの評判が良く『僕はイラストレーターの方が向いているのかもしれない』と思うようになったんです。桑沢の時はZINEのイベントやグループ展に参加したり、色々な展示を見に行っていました。その活動がきっかけで、専門学校以外の場所でも知り合いや友達が増えたりと、交流の場が広がっていきました。その時の出会いは、その後の活動にもつながっているんです。イラストレーターとして仕事を始めてから4年後に、友達が雑誌『POPEYE』のアルバイトとして働いていたことがきっかけで、雑誌の挿絵としてマップを描く仕事を受けました。それから頻繁にイラストの依頼が来るようになったんです。その流れで、表紙にイラストを描くことに。雑誌の表紙は、一番目立ってたくさんの方が目にするところなので嬉しかったですね」
あの表紙には、そんなストーリーが隠されていたのかと感動。仕事としてイラストを描くことと、自分の好きなものを自由に描き続けることへの想い。オカタオカさんは、定期的に個展やイベントを開催しています。自分のイラストを見るためにたくさんの人が足を運んでくれる光景は、活力になっているそうです。しかし、求められている嬉しさとは、うらはらにある思いが生まれてきたとのこと。好きなことを続けてきたからこその考えに、なるほどとその思いがスッと伝わってきました。
「最近は、自分の絵と向き合う時間の大切さを実感しています。仕事としての絵を描く場合、締め切りがあるので、スピードが必要です。そこで、効率的に作業ができるiPadでイラストを描く時もあるんです。筆で描く時とは少し違って、着色もすぐできて効率的に描ける利点はあるのですが、いざ自分の好きな絵を描こうと筆を持った時に『あれ?どうやってあの線出してたっけ』と忘れてしまう気がして。来年か再来年か、いつになるかはわからないですが、余裕のあるスケジュールで、自分の絵と向き合いながら仕事ができるといいなと、思うこともあります」

2018年11月に、九州初となるオカタオカさんの個展『BOUGAINVILLEA』が、宮崎県庁に通じる楠並木通りにある、デザイン事務所兼ギャラリーのSometimesで、絵本『しんまいぐま』の原画展がKIMAMA BOOKSで開催されました。生まれ育った土地で行う、初めてのイベントたち。このイベントは、様々な縁がきっかけで、引き寄せられるように開催が決まったそうです。
「実は3年ほど前から、宮崎に帰ってくる機会が増えていました。自然が多く住んでいて気持ちのいい場所だと、地元を離れたからこそあらためて気づくこともありました。また色々な場所で面白いことをしている人たちに出会う機会もあり、自然と帰ってくる頻度が増えていました。今回、個展や原画展を開催することが決まって、正直初めは不安もあったんです。僕の絵を見てくれる人がいるのだろうか、みんな興味はないだろうなって。でも始まってみると、フラっと会場に入ってきて絵を見てくれる人がいたり、絵を購入してくれる人がいたり。昔の僕が過ごしていた地元とは、違った変化を感じました」
一度、離れた地元への思い。私たちも同じで、生まれ育ったまちに思いはあります。それでも自分のやりたいことを叶えるために、地元を離れた生活を選択するかもしれません。しかし離れたことによってわかること、知ることもあるんですよね?
「なりたい自分になるために、地元を離れたとしても、こうして帰ってこれる場所があるって大切だと実感しました。好きなことを共有できて、同じ方向性で話ができる面白い人たちとの出会いによって、あらためて地元の良さを理解できたと思います。東京にいる僕が言うのもおこがましいのですが、こうやって帰ってきたいと思える場所が増えると、地元がもっと面白くなるような気がするんです」
紆余曲折あった学生時代に、好きなことを諦めることだってできたはず。それでも、描き続けることを選んだオカタオカさん。そのイラストから力強さと優しさを感じるのは、好きなことに素直になれる人柄と、動き続けてきた行動力と経験があるからこそだと思いました。
そして今日も私は、お気に入りのあの雑誌をみて自然と顔がほころぶだけでなく、もっと好きなことに素直になろうと、背中を押してもらったような気持ちになるのでした。

イラストレーター / オカタオカさん
1986 年生まれ。宮崎県出身。宮崎公立大学を卒業後、桑沢デザイン研究所に進学。現在は、東京を活動拠点として、雑誌『POPEYE』『BRUTUS』などの雑誌の表紙、飲食店のロゴマーク、ミュージシャンのアートワークのほか、ペーパーウェイトなど様々なアートワークで幅広い分野で活動をされています。国内外での個展開催などその活動は多岐にわたります。バンド「水中図鑑」としても活動。2018 年 9月、初の絵本作品「しんまいぐま(若芽舎)」を発表。