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世界でたった一つの着物をこの手で作り続ける

インタビュー - 2017.05.09

 全国から集った熟練技能者が、技能の日本一を競い合う「技能グランプリ」。第29回大会では、家具製作やレストランサービスなど30職種に、514人の熟練技能者が出場しました。着物を縫製する「和裁」の部に出場し、見事「銀賞」を修めた熟練技能者が宮崎市にいます。

株式会社宮崎和裁 和裁士 立山敦沙さん(27歳)

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アニメをきっかけに

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 初めて日本文化に興味を持ったのは、アニメがきっかけでした。中学生のときに「るろうに剣心」にハマったんです。明治時代初期の日本が舞台となっていて、登場人物が皆「和服」を着ていました。ストーリーも面白かったんですが、登場する和服や日本文化の魅力にどんどん魅了されていきました。高校に入ると、次は「和小物」に夢中に。部活も「和」なものが良いと、茶道部に入りました。そして、卒業後も日本文化に関わる仕事がしたい、と自然と考えるようになったんです。どうにか日本文化に関わる仕事ができないかと、宮崎県内の求人を探していました。中々思うような仕事が見つからない中、たまたま10年以上前の求人を眺めていたのですが、そこで見つけたのが今の職場「株式会社宮崎和裁」でした。10年以上も前の求人なので、もちろん当時は募集はしていませんでした。しかし、どうしても働きたい!と先生に繋いでいただき、それだけ意欲があるなら、と採用していただいたんです。

手足を使い、ひと針ひと針想いを込めて

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 ミシンを使って着物を製作しているところもありますが、私達がここでつくる着物は、針と糸・コテ・指差し・物差し・はさみ、使う道具はこれくらいで、機械は一切使わないんです。あとは自分自身の「手」と「足」だけ。あぐらの状態で、片足を反対の足の太ももの上に乗せる「半座禅」と呼ばれる姿勢になり、足の指で着物の布を固定して、縫っていくんですよ。就職したての頃は、まずこの「半座禅」の姿勢を続けることからトレーニングが始まりました。慣れない姿勢に、10分もすると体がビリビリしびれてきちゃいます。着物を縫うことは、とても地道な作業。先生に指導して頂きながら、ひたすら着物を縫いトレーニングを続けました。機械に頼らない分、コツコツと身体に技術を染み込ませる必要があるからです。理想と現実のギャップを感じて、ドロップアウトしてしまう人も正直少なくありません。仕事というよりも「修行」に近いんじゃないかなって私は思っています。

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世界に一つだけの着物を作り出す喜びと誇り

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 もちろん、しんどいときだってあります。だけど、大好きな日本文化に触れていられて、何より「世界に一つの着物」を自分の手で作り出せる喜びはとても大きい。1枚1枚異なる柄で、1つ1つ特別な着物が出来上がる。この出来上がりの瞬間は、ものすごく嬉しいんです。実は私、入社するまで、自分で浴衣も着られなくて。だけど今では、着付けはもちろん、自分で自分の着物を縫えるようになった。トレーニングの賜物です。ここで身につけた技術は一生ものです。どんな仕事でも、同じなんじゃないでしょうか。辛い時は絶対ある。だけど苦労すればするほど、得られるものは大きい。ぜひ同年代の皆さんには、誇りを持って自分の輝ける場所で働いて欲しいなと思います。九州でも数少ない「和裁」の会社に、地元宮崎で就けていることを大変誇らしく思っています。

次に目指すところ

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 過去に23歳までが出場できる「技能オリンピック」に2度出場し、「技能グランプリ」は今回が2度目。大会の前には、普段の倍の着物を作り、準備を重ねます。寝ても覚めても、着物を縫うといった具合です。大会本番では、9時間で課題の着物を作るのですが、時間配分が非常に重要で、かつ難しいんです。当社には、多くの熟練技能者がいます。そんな先輩方から丁寧にアドバイスをいただける、とても恵まれた環境です。先輩方のアドバイスがあったからこそ、宮崎に優れた技能者がいるからこそ、私は今回の銀賞という評価を得られたんだと思っています。次の目標は、技能グランプリで「金」をとること。また、先輩方のように羽織やコートなど、色んな種類の着物が縫えるように、技術を身に着けていきたいと思っています。もし日本文化に興味のある方がいたら、ぜひ一緒に和裁の世界で「一生ものの技術」を身に付けてみませんか。

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ライター後記

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 「着物」は、ただ身につけるものではない。そこには、日本文化の知恵や工夫、侘び寂びという日本独自の価値観が詰まっている。着物を身にまとうだけで、日本人としてのアイデンティティを示すことにもなります。そんな「着物」を作り出す「和裁士」。立山さんが言うように、容易にこなせる職業ではありません。しかし、「和裁士」になることは、日本の文化や伝統を紡ぐことでもあります。また、自分の手で作り出した「着物」が誰かの物語を彩る作品にもなる。立山さんの「和裁」を通して滲み出るのものづくりに対する想いを多くの若い世代に届けたい。そう強く思ったインタビューでした。