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有限会社 奇日根 取締役 児玉光世さんのイメージ画像

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2022.03.16

インタビュー

有限会社 奇日根 取締役 児玉光世さん

花を育て、美しく飾り
自分しかできない仕事にする

 昨年12月18日、19日に東京ビッグサイトで開催された第59回技能五輪全国大会。フラワー装飾部門で敢闘賞を受賞した児玉光世(こうせい)さんは、自社でバラ生産をし、フローリストとしても活躍しています。仕事の魅力や花の楽しみ方などをお聞きしました。

—この仕事に就いたきっかけは? 
私の家は、先祖代々農業を営んでいます。祖父がバラの生産を始め、父の代で法人化しました。子どものころから祖父に「花を一緒に育てよう!」と言われ続けた私は、疑いもなく(笑)宮崎農業高校に進みました。正直、悩んだ時期もありましたが、家業を継げば「経営者」になれる、自分の思うように仕事ができると思い、花の勉強に励みました。
—昨年の技能五輪や、現在までの歩みを教えてください。
高校を卒業した後、高鍋町の県立農業大学校に進みました。2年間の在学中、フラワー装飾技能士の資格を取得したほか、第56回技能五輪全国大会に初めて出場し、フラワー装飾部門で銅賞を受賞。卒業後は東京の日本農業経営大学校に入学しました。全国規模の花き生産者や、斬新なアイデアを持つ経営者の方々との出会いは、私の大切な財産です。

第59回技能五輪の様子と完成した作品。お題や使用する花が当日に発表されるサプライズ競技も開催された

贈るひと、贈られたひとに
笑顔を咲かせる花束

—花を扱うことの魅力は?
花を渡した人、もらった人が、どこか気持ちが前向きになって喜んでくれる。生産者として幸せなことです。「男だから花屋に入りづらい」と同級生に花束を頼まれることがあるのですが、後日、「あんなに喜んでくれるなんて!」と報告をもらったときは最高の気分です。宮崎の男性たちも、誰かに花を贈る日常が普通になるといいなと思います。
—花を飾るコツはありますか?
容器の高さと、口から出る花の長さを1対1にするとバランスよく見えます。口の細いガラス瓶ならよりオシャレに。メインの花にユーカリなどの緑を添えてもきれいです。直射日光を当てず、水換えを毎日行い、茎の先を水につけたまま「水切り」すると花が長持ちします。季節の花や、いいなと感じた花をまずは飾ってみてください。部屋の印象が変わりますよ。

ビニールハウスで土から育てる昔ながらの土耕栽培を行っている。インスタグラムではアレンジフラワーを発信中。花束の注文も可能

ロスフラワーを減らし
みんなの日常に花を添えたい

—これからの展望を教えてください。
せっかく育てた花も、時季が過ぎたり、注文が少なかったりして廃棄処分になることがあります。そういった「ロスフラワー」は、私たち生産者や、小売店にとって大きな問題。そこで当社では、花束の注文を受けた後に希望に沿った花を仕入れ、花束を作るという取り組みを始めました。東京の大手ショップでは、定額料金で毎月花を届ける「花のサブスク」を行っているところがあります。私も花のある暮らしを楽しんでくれる方が増えるような取り組みをしたいです。
—宮崎の若い人にエールを!
実家が花を生産していたからこそ今の自分があります。好きなことと得意なこと、そして社会のためになること、その3つがそろった幸せな仕事だと家族に感謝しています。仕事はやってみないと分からないところもありますが、就職など進路について悩むのもいい機会です。ぜひ自分自身を見つめ直してみてください。

半年ほどで出荷、5〜6年で苗を植え替える。冬は朝7時頃から、夏は6時すぎから作業が始まる

 

有限会社 奇日根(くひね)
新別府町麓464-イ
Instagram @kosei__kuhine