患者さんとの心の対話。薬剤師が築く信頼の絆
WORK
宮崎市内薬局所属若手(20〜30代)薬剤師の皆さん
\薬剤師ってこんなお仕事! / ■薬を準備して渡すだけではない、医療の一翼を担う専門職 ■国家試験は高難易度!乗り越えたからこそ得られる力 ■仕事もプライベートも充実!安心安定の労働環境 今回は、宮崎市で活躍する4名の薬剤師にお話を伺いました。薬剤師を目指したきっかけや就職までのステップ、現場での具体的な仕事内容ややりがいまで、それぞれのリアルな声をお届けします。
薬剤師という選択、4人の思いとその原点
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自己紹介をお願いいたします!
図師 健一郎(ずし けんいちろう)、宮崎市出身で1987年生まれの37歳です。
宮崎県立宮崎北高等学校を卒業後、延岡市の九州医療科学大学(旧 九州保健福祉大学)へ進学。現在は、二葉薬局大島に所属し、管理薬剤師(※1)とエリア長を務めています。
主に医師の処方箋に合わせて薬剤を調合する「調剤業務」をしていますが、在宅医療(※2)にも積極的に取り組んでいます。また、個人の活動として、一般社団法人宮崎市郡薬剤師会に所属して、災害対策委員会の活動にも関わっています。
※1 管理薬剤師とは、薬剤師の中で、薬局や店舗、製造業などの場所ごとに、薬機法に基づいて設置が必要とされている「責任者」を指す。
※2 在宅医療とは、自宅で医師や看護師などの医療従事者が訪問して行う医療サービス。患者さんの生活環境に配慮した治療を提供する。
阿久根 舞(あくね まい)、宮崎市出身で1999年生まれの26歳です。中高一貫校を卒業後、九州医療科学大学を経て、みはな薬局で薬剤師をしています。
薬剤師歴としては2年目で、調剤業務や服薬指導を担当しています。
松永 夏子(まつなが なつこ)、福岡県出身で1998年生まれの27歳です。
福岡の高校を卒業後、九州医療科学大学へ進学。阿久根さんと同じタイミングで大学へ通っていました。
現在は、啓愛調剤薬局で薬剤師をしています。薬剤師歴としては2年目で、調剤業務や服薬指導を担当しています。
山口 貴文(やまぐち たかふみ)、宮崎市出身で1991年生まれの34歳です。
宮崎県内の高校を卒業後、福岡大学薬学部へ進学。今は、一般社団法人宮崎市郡薬剤師会会営薬局宮崎地区研修センターで、管理薬剤師をしています。主に宮崎県立宮崎病院の院外処方箋の対応をしています。
業務としては、図師さんと同じく、薬の調剤業務や服薬指導管理、薬の在庫管理などを行っています。
皆さんは、なぜ薬剤師を志したのでしょうか?
図師:高校卒業が少し遅れてしまい、就職や進学を考えるまでに1年ほど時間が空いてしまいました。そんなとき、父から「3年間高校に通わせたのだから、何か"証"を示してほしい」と言われたことが、進路を真剣に考えるきっかけになりました。
その言葉を受けて、「証」とは大学進学だと考え、いくつかの学校を受験。その中で合格したのが九州医療科学大学でした。
合格できたことで「ここで学びたい!」という気持ちが湧き上がり、薬剤師への道を少しずつ歩み始めることができました。
山口:幼いころから祖父母に「人を大事にしなさい」と教えられて育ち、相手の気持ちに共感する力を自然と育んできました。その影響もあり、「人の役に立ちたい」「命を助ける存在になりたい」という思いが強く芽生えました。
また、祖母から医者になることを勧められたこともあり、医学部を目指して受験しましたが、結果は思うようにいかず、浪人を経て再挑戦するも、別の選択肢を考えるタイミングが訪れました。
そのとき、父がかつて目指していた「薬剤師」という道を思い出し、「薬を通じて人々の健康を支える」という新たな夢が明確になり、薬学部への進学を決意しました。
阿久根:小学生の頃は、歯科矯正をしていたことがきっかけで、「歯科衛生士になりたい」と思っていました。
治療中に痛みを和らげるために処方された痛み止めを飲んだ時、その効果に驚き、「どうして薬で痛みが消えるのだろう?」と不思議に思いました。この経験が、薬に対する興味を深めるきっかけとなりました。
中高一貫校に通い、進路を決める時期には、多くの薬剤師の方と話す機会があり、次第に薬剤師という職業に魅力を感じるようになりました。そして高校に入ると、薬学部を目指して本格的に勉強を始めました。
大学受験時には、思い通りの結果が得られなかったため、大学では「同じ思いをしたくない」と心に誓い、より一層勉強に励みました。
松永:阿久根さん、大学時代とても頑張っていて、本当に優秀でした!
私は、幼少期から祖母の認知症に伴い、母と一緒に薬の管理やチェックをしていたため、薬は身近なものとして感じていました。しかし、当時はまだ薬剤師という職業自体を知りませんでした。
高校に進学し進路を決める際、母から「医療従事者になってみては?」と提案されました。そこから医療業界について調べ、薬剤師という職業に出会い、その労働環境や給与なども考慮して、薬剤師を目指すことを決意しました。
そのころ、私は硬式テニス部に所属し、部活一色の日々を送っていました。そのため、親や先生からは「大丈夫かな?」と心配されていましたね(笑)。
「薬剤師」というと、大学の薬学部で6年制の課程を修了し、薬剤師国家試験に合格することが必須となっています。かなり難易度の高いステップだと思うのですが、実際いかがでしたか?
図師:大学入学後、特に国家試験前の時期は、本当にきつかったですね。
薬には何千という化学成分があり、さらに漢方薬の成分である生薬については、ラテン語(学名)まで覚える必要があるんです。ひたすら暗記の日々で、正直、心が折れそうなこともありました。それでも、なんとかやり切るしかないと自分を奮い立たせて頑張りました。
その頃のことは、いまだに夢に出てくるほど強烈な記憶です(笑)。
でも、そんな大変な国家試験を乗り越えた経験があるので、今も「なんとかなる!」というマインドがありますね。
松永:大学に進学する際、薬学部は「遊べないし、ずっと勉強ばかりしている」というイメージを持っていました。
でも実際に通ってみると、意外とそうではなかったんです。勉強はもちろん大変ですが、それだけではなく、授業が終われば友達とカフェに行ったり、しっかり息抜きもできる時間がありました。
試験前には一日中勉強漬けになることもありましたが、振り返ってみると、苦しいことばかりではなく、充実した日々でした。
学生時代の経験で、今につながっているものはありますか?
山口:大学在学中、ファーストフード店でアルバイトをしていました。ありがたいことにマネージャー職を任せていただけるほど信頼をいただきました。
アルバイト仲間は高校生から70代の方まで年齢層が幅広く、様々な世代と接する貴重な機会を得ることができました。もともと人と話すのが苦手だったのですが、この経験を通じて「話すことの楽しさ」を学べたと思います。
また、マネジメントやオペレーションについても実践的に学ぶことができました。そのとき培った経験が、今の自分に確実に活かされていると感じています。
松永:大学2年生のとき、免疫疾患であるSLE(全身性エリテマトーデス)を発症し、10月から翌年3月頃まで入院生活を送ることになりました。
その期間、成人式にも参加できず、結果的に留年することとなりました。
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後から親に聞いたのですが、当時の私は「どうなってもおかしくない」ほどの状態だったそうです。緊急透析を受けたり、ひどい口内炎のせいで食事がとれなくなったり、血糖値が急上昇してインスリン治療を受けたりと、大変な日々でした。
ただ、この経験を通して得たことがあります。患者さんのつらさや不安に心から寄り添えるようになったことです。
私自身、投薬治療の大変さを実感してきたので、「私もたくさん薬を飲んでますよ」と、同じ立場に立って話ができるんです。
過去の経験が今の自分に生きていると感じていますし、それが私の薬剤師としての強みだと思っています。
調剤の先にある、患者さんとの心の対話
薬剤師というと忙しいイメージが強いですが、実際の労働環境はどうなのでしょうか?
松永:そうですね。業務中はもちろん忙しいのですが、会社が勤務時間を適切に管理してくれているので、自分の時間をしっかり取ることができています。
スキルアップのための勉強の時間や趣味の時間を目一杯楽しむことができていますよ。仕事とプライベートのバランスは取れていると思います。
1日のスケジュールとしてはどのようなイメージなのでしょうか?
図師:所属する薬局や役職によって違うと思いますが、基本シフト制で私の場合は大体8時間勤務です。8時半に出勤したときには、17時半まで働いています。そのあと個人の業務をやっています。
薬局業務としては、定時に上がることが多いですね。
お仕事をする中でやりがいを感じる瞬間はどんなときでしょうか。
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阿久根:薬剤師は、薬を調剤し服薬方法を説明するだけでなく、患者さんの健康状態や生活習慣に関する相談にも応じて、薬の効果や相互作用、副作用などについてもアドバイスしています。
ある時、副作用がひどいんだけれども、うまくお医者さんに言えなかったという患者さんがいらっしゃいました。深くヒアリングをし、先生へ相談。薬を変えて、様子をみることになりました。
すると「あのとき対応してくれたおかげで、副作用がなくなった。本当にありがとう!」と言っていただけて。薬剤師としての役割を果たせたのかな、と思い、とてもやりがいを感じて嬉しかったです。
松永:普段から、薬の話だけでなく、患者さんの日常の生活や嗜好についても丁寧にコミュニケーションをとりながらヒアリングしています。
そんな中で、いつも「対応が遅い!」と指摘される方がいらっしゃって。皆、少し戸惑いながら対応していました。
しかし、その方の話をしっかり伺って、いろんなお話をしていくうちに徐々に心を開いてくださった。最終的に「ありがとうね、なっちゃん」と笑顔でお別れを言っていただけたんです。
そのときは、心を開いてもらえることがとても嬉しく感じました。
患者さんとの関係が深まっていくのを感じることができるのは素晴らしいことだなと思います。
図師:初めて赴任したのが高原町の薬局で、地域の方々に密着してる薬局でした。
当時は、患者さんから"メガネのお兄ちゃん"と呼ばれ、「お釣りの渡し方」や「西諸弁」についても教えてもらっていました。
「服薬指導うまくなったじゃん!」とか、初めて役職がついたときには自分ごとのように喜んでくれました。患者さんに一人前の薬剤師として育ててもらっていた感じでしたね。
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その後、静岡に赴任していた時期もあったのですが、そのときはわざわざ旅行で近くに来たからと西諸地区から来てくださった患者さんもいらっしゃいました。
そこまで信頼していただけているんだと、とても嬉しかったですね。
わざわざ県外まで!それほど信頼関係を築かれていたんですね。
逆に、お仕事の中で難しいなと思うことはありますか?
山口:今、宮崎県立宮崎病院という大きな病院の前にある薬局ということで、がんの宣告や余命の宣告を受けた方がいらっしゃることも多いんです。患者さんとコミュニケーションを取る中で、涙を流されることもよくあります。
なんて言葉をかけたらいいのか、正解はまだわからないのですが、今は事実を一緒に受け止め、寄り添うことを大事にしています。時には一緒になって涙が流れることもあります。
患者さんは「聞いてくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えてくださって帰っていかれます。
どんな対応がベストなのか、永遠の課題だとは思うのですが、真摯に寄り添って耳を傾けることを大事にしていきたいと思っています。
一般的に、「薬剤師=後ろの部屋に入って薬を調剤する」というイメージが強いと思います。もちろんそこで、誤りのないように適切な調剤を行い安全かつ効果的な薬物治療を提供することは重視しています。
加えて、同じくらい患者さんとの対応も大事にしているんだということも伝わったら嬉しいですね。
皆さんの今後の目標を教えて下さい。
松永:スポーツファーマシストの資格取得に向けて勉強しています。
このほかにも病気ごとに特化した資格があるのですが、よりスキルアップを図り、専門性を高めていきたいです。
患者さんから「この薬剤師さんに次も薬をもらいたい」と思われるような存在になっていきたいです。
阿久根:学生時代から生活習慣病へ高い関心を持っていました。生活習慣病はいわゆる「未病」と呼ばれ、病気ではないのですが健康状態が正常でない段階を指します。
未病を予防することが、病気の発症を防ぐための鍵とも言われています。重大な病気になる手前、未病の段階にもアプローチできるような薬剤師になりたいなと思っています。
そのためにも勉強やスキルアップをしていきたいですね。
山口:管理薬剤師として従事し2年、市の薬剤師会の理事の先生方と話す中で、職場環境の改善やスキルアップに関してかなりたくさん動いてくださっていることを知りました。
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現場にいたときはなかなか感じられなかったのですが、先生方自身も多忙な中、勉強会や交流会の企画をされるなど尽力されています。
今後は、うまく現場に伝え、モチベーションやスキルアップにつなげていきたいです。
図師:薬局って、対患者さん、そして特定の病院の医療従事者と仕事をすることが一般的だと思うのですが、対「社会」に対しても動いていく必要があると思うんです。
今取り組んでいる在宅医療になると、お医者さんはAの病院から、看護師さんはBの病院から、介護士さんはCの施設からなど、多様な医療機関と連携して行うことになります。すると、社会的にも私達の存在の認知が広まりやすくなる。
大宮地区の医療従事者に対して、多職種連携の企画委員もしているのですが、「薬局の薬剤師は、こんなこともやっているんですよ」と周知していきたい。そこで作った人脈を次世代につなげていきたいと思っています。
休みの日は、推し活や農業でリフレッシュ!
皆さんのお仕事の必需品を教えて下さい。
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休みの日はどんなことをして過ごされていますか?
図師:休みの日は、息子と公園に行っています。とても癒やされる存在ですね。
松永:推し活をしています!TWICEのミナちゃんが大好きなのですが、観るだけで疲れが取れるくらいです。彼女のおかげで国家試験の勉強も頑張れたと思っています。
休みの日にイベントがあると、大阪や東京に行って楽しんでいます。
山口:祖父の農業を手伝っています。肉体労働なので疲れはするのですが、土に触れることで、とてもリフレッシュできています。
阿久根:カフェ巡りや旅行を楽しんでいます。
自分を信じて、目の前にがむしゃらに!経験が未来に活きる
最後に、宮崎の若者へメッセージをお願いします!
図師:私自身20年後、自分が薬剤師として働いてるなんて夢にも思いませんでした。今すごく楽しいですし、刺激的な毎日を過ごしております。
目の前のことをがむしゃらに頑張ってみてください!
阿久根:一度だめだと思ってしまっても、自分を信じて諦めずに一生懸命頑張ってください。
行った先で素晴らしい人たちに出会えてますし、素晴らしい友達や仲間もできますよ。
松永:生きていればきっと、辛いことや苦しい時期が必ずあると思います。でもそこを乗り越えることで絶対自分の力になるし、自信にもつながってくる。
趣味や夢中になれるものを見つけて、楽しみながら過ごしていければきっと大丈夫です!
山口:たくさん勉強して、いろんなことを経験してください。きっと、それが社会人になった時に役に立つはずです。
そして、自分に厳しく人に優しい人でいてください。その優しい心がきっと人を動かす力になると思います。
皆様の人生が楽しい人生になりますよう、応援しています!
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