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失敗から生まれた、魚の鮮度改革!水産業も個人の時代

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有限会社長谷川水産/株式会社水流魚仕立て人 津本光弘さん

魚の臭みの原因である「血」を抜くことで、魚の旨味を最大限に引き出す手法「究極の血抜き津本式」を生み出した、津本光弘さん。新鮮なものが美味しい、腐りやすいといったこれまでの魚の常識を覆し、日ごとに旨味が増す熟成魚に仕立てます。廃棄を減らすサスティナブルな手法でもあり、著名な料理人や研究者からも注目を集めています。水産業に携わりながら、個人のブランド力を高める津本さんに詳しく話を伺いました。

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ゲームのように考え、追求し、何事も楽しんだ

自己紹介をお願いいたします!
有限会社長谷川水産・株式会社水流で「魚仕立て人」をしています、津本光弘(つもと みつひろ)です。大阪府出身、1973年8月生まれの49歳です。 魚の臭みの原因が、魚に残った血が腐ったせいだと気付き、究極に”簡単な”やり方で血を抜く仕立て方法「津本式」を考案。SNSを使い、お客様に向けた情報発信を行っています。
津本さんのYouTube。現在のチャンネル登録者数は23万人を超える
また、津本式の処理法に合わせたオリジナルの包丁やナイフ、ウロコ取り、ノズルなどの血抜きグッズを販売するインターネットの販売サイトも運営しています。
究極の血抜き津本式専用器具を販売している
幼いころから釣りや魚が好きだったのでしょうか?
幼少期に最初に夢中になったのは「虫」でした。 大阪府の京橋という市街地に生まれ、街に緑は少なく、虫がとても貴重な存在だったんです。田んぼや森もなく、身近な緑というと植木鉢や花壇くらい。カブトムシなんて憧れでしたね。ゴキブリを飼ってみたり、昆虫にハマっていました。 次にハマったのがカエル。そして次に「ナマズ」に夢中になりました。
「ナマズ」ですか?
そう。あるとき、図鑑で「ナマズ」を見て「この魚を飼育してみたい!」って思ったんです。 お店には売ってなかったので、釣るしか無いと思い、小学2年生のときに初めて釣りをしました。釣り雑誌を見て、釣り方を学びチャレンジするも、なかなか釣れない。どんどんハマっていきました。 ナマズはなかなか釣れないけど、代わりに他の魚は釣れるので、図鑑で名前を調べながら、どんどん魚の種類を覚えていきましたね。今でもその時の知識がいきていますよ。
幼いころの好きから知識を身に着けていったんですね。その後、20歳のときに宮崎に移住されていますが、どんなきっかけで移住されたのでしょうか?
サーフィンがきっかけでした。 高校時代に友人の紹介でサーフィンにハマり、宮崎の波が良いことを知りました。1度行ってみたところ、噂通りかなり波が良かった。「いつか宮崎に移住したい!」と思うようになりました。 経理の専門学校に進学し、学びながらアルバイトで資金を貯め、20歳のときに宮崎県の高鍋町に移住しました。
思い切って移住はしたものの、当時はバブル崩壊後。景気が悪く、求人も給与も少ない状態でした。貯金を切り崩しながら、高鍋のガソリンスタンドで働きつつ、サーフィンを楽しむ日々を送っていました。 しかし、給与も良いとは言えず、生活資金は枯渇。もっと稼がなくてはと思い、知人に紹介していただいたのが、宮崎中央卸売市場内での活魚(生きている魚)を扱う仕事でした。 でも、当時は毎日辞めたいと思ってましたよ。
かなりハードなお仕事だったのでしょうか?
そうですね。魚ってものすごく重いので、体力勝負。 加えて、当時はスマートフォンもない中で配達しないといけなかった。宮崎の人間じゃないので、道がわからないんですよね。無線を持って移動していましたが、宮崎の言葉で飛び交う指示もなかなか理解が難しい。道に迷い遅くなると、結構怒鳴られていました。 ほぼ毎日のように怒られてたんじゃないかな?
そんな環境下でどのようにモチベーションを維持したのでしょうか?
なんでもゲーム感覚にして楽しんでいたところはありますね。 例えば掃除一つとっても「誰よりも綺麗に素早くやるためにはどうしたらいいか」と追求していました。 他にも、魚は鮮度を保つために「締める」という作業を行います。生きた魚を即死させ、鮮度を保つために行うものなのですが、その締める作業をいかに早く魚を苦しませず行えるか、ずっと追求していましたね。 幼いころからそうなのですが、より難易度が高いものを求め、追求することを好む傾向がありますね。達成感を感じ、モチベーションになっていたと思います。

失敗から生まれた「究極の血抜き 津本式」

その後「究極の血抜き 津本式」を42歳で考案されています。どのように発見されたのでしょうか?
ヒラメを処理していたときに、たまたま発見したんですよね。 宮崎卸売市場ではヒラメの尾とエラを切って血抜きをし、眼のない方の白い面を上にして販売していました。胃に内容物が入った状態で置いておくと、時間が経つに連れ、どんどん自身の胃酸で身体を溶かしてしまうのか、胃の部分が緑色になってしまう。 それを防げないかと、口にホースをいれて水を流し込み、胃の内容物を口から出させる「胃洗浄」をしてみたんです。すると、次の日かなり魚の身がキュッと締まっていた。とても状態が良くなっていたんです。 同じように水で胃洗浄をするようにしていたある日、水が尾の方からピューと出たんです。そこで自分の中で点と線が繋がり、血抜きをしていたエラの穴に水を入れてみたんです。 するとメキメキっと魚全体が膨れ上がった。ヤバい!水が身に入ってしまった…やってしまった…と思いました。水が入ると旨味が減ったり、水っぽくなると言われ、魚業界ではタブーと言われていました。 次の日、いつもお世話になっているお鮨屋さんに「ごめん!水入ったかもだけど、使ってみて」とお願いしてみたんです。すると、実際に捌いて使ってくれた大将が『魚に血が一滴もなかった。津本さん、これ革命かもしれないよ』って言ってくれたんです。 これが、究極の血抜き津本式が生まれた流れです。最初は失敗から、だったんですよね。
究極の血抜き津本式を施した魚は、日持ちし、日ごとに旨味が増すと伺いました。
そうですね。血が抜けることで日持ちする。元々エネルギーの多い魚であれば、日ごとに旨味が増すんです。カンパチなんかは、10日目頃が最も旨味が増して美味しいんですよ。
左が、津本式で仕立てられた熟成11日目の「カンパチ」。もっちりとした食感に甘みや旨味を感じる
このことは、国立大学法人東京海洋大学の教授も研究してくださっていて、データで見ても旨味の数値は9日目頃が最も多いらしいです。感覚だけじゃなく、科学的に証明されているんですよ。
究極の血抜き津本式で魚を締める動画や道具についての配信をしているYouTubeチャンネルは、今や23万人を超えるチャンネル登録者数になっています。なぜYouTubeをやろうと思ったのでしょうか?
目的は、お客様に向けて発信することでした。 SNSの無い時代には、魚の仕入れ情報や豆知識を書いた新聞を手書きで作り、お客様に配っていました。メールができたらメールで、LINEが出てきたら、LINEグループを組んで発信していました。 Facebookでも投稿していたのですが、新しく投稿するとどんどん下に下がってしまう。であれば、YouTubeで発信してみようと思い、始めました。どんな風に魚を仕立てているか、ひたすら無言で作業する様子を発信していました。 するとある日、北海道の著名な料理人の方から「商品を送って欲しい」とYouTubeで連絡がありました。商品を送ると「あなたすごいことをしているね!」と絶賛してくださって、保存方法のコツなど様々なことをアドバイスいただきました。他にも、国立大学法人東京海洋大学の方からもYouTubeをきっかけに連絡をいただいて「死んだ魚の血を抜くことは、今まで誰もやったことがない」と驚かれ、研究をしてくださっています。 YouTubeをきっかけに、たくさんの協力者が生まれましたね。

フォロワーよりもファンを。今は「個人」の時代

発信をすればするほど、アンチコメントをする人や否定する人にも多くなるかと思います。どのような考えで乗り越えていますか?
私自身、何万匹という魚をこの手で扱ってきました。魚の仕立て業界の中では、トップを走っているという自負があります。 だからこそ、何を言われても揺るがないですね。
お仕事や情報発信をする中で、大事にしていることはありますか?
嘘をつかないことかな。 信用商売なので、常に正直でいるようにしています。YouTubeはあくまでも手段。フォロワーの数を追い求めるのではなく、ファンを増やすことに重きを置いています。インチキで短期的に稼ぐことができても、長期的にはボロがでてしまい、稼ぎ続けることはもちろん難しいし、ファンもできないですよね。 あとは、お金を追い求めないこと。お金って実績があればついてくるものなんですよね。お金の勉強は学生時代にしっかりとして、あとは手に職をつけることが大事だと思います。
今後の目標を教えてください。
「究極の血抜き津本式」を世界に広げていきたいですね。 せっかく食べるなら美味しい方がいいし、長持ちした方がいい。すでにSNSでは海外からのアクションもありますが、もっともっと多くの国に展開できたら嬉しいなと思います。
最後に、宮崎の若者へメッセージをお願いします。
進化ってストレスなんですよね。 新しいスマートフォンにすると、使いこなせるようになるまであたふたしますが、乗り越えたら新しい機能が使えて進化するでしょ?それと同じで、最初はストレスがかかりますが、乗り越えたら進化が待っているんです。 だからこそ、しんどいときも乗り越えて、やり続けて欲しいですね。 水産業も、働き方改革やデジタル化が進み、かなり働きやすくなってきています。そして、個人でアピールできる時代になってきている。これからもっともっと個人の時代になっていくと思いますね。 何事も1万時間やり続ければ、誰でもプロになれる。ぜひ手に職をつけて欲しいですね!

 

 

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