弱さも情けなさも見せる。等身大の自分をリリックに乗せて
CULTURE
Four Mud Arrows ラッパー GADOROさん
\ GADOROさんってこんな人! / ■宮崎県高鍋町出身。宮崎在住ラッパーとして全国で活躍 ■自己中心的で虚勢を張り続けた、孤独な幼少期 ■故郷を愛し、等身大の自分を届け続ける。目指すは武道館! そんなGADOROさんのこれまでの歩みとは?詳しく話を伺いました。
自己中心的な行動から、孤立。それでも虚勢を張り続けた学生時代
自己紹介をお願いいたします!
Four Mud Arrows所属 ラッパー GADORO(ガドロ)です。1990年11月生まれで、出身は宮崎県高鍋町です。今も拠点は高鍋町に置き、活動しています。
幼いときはどんな子どもでしたか?
とにかく、絵に描いたようなクソガキでしたね。
具体的なエピソードを話すと、皆さん引いてしまうかもしれないのですが…
例えば、サッカーをやるとき。そんなに上手じゃなかったので、とにかく目の前の人をどう避けるかを考えていました。そこで当時の俺は、相手の足を蹴っちゃっていた。鬼ごっこをしているときにも同じように、追っかけてくる相手に暴力振るっちゃったりして。
力にものを言わせる、本当に自己中心的な子どもでした。
小学生から高校生まで、野球部に所属されていたそうですね。
そうですね。親父が野球大好きで、親父をこんなに夢中にさせる野球を自分もしてみたいなと思って、小学3年生から野球部に入りました。
そこでもやっぱり自己中心的な性格だったので、中学のころに大孤立してしまって。野球部でも学校内でも、3分の2くらいは口も利いてくれない状態でした。
「ハジマリ」という楽曲のリリック(歌詞)に当時の様子が描かれています。
"野球部キャッチボール相手は壁だった
狼のフリをした一匹の野良犬
長い一日をひたすら悶える"
一匹チワワな状態なのに、それでも狼のように肩で風切って。そんな態度だったので一層、孤立していきました。
2020年リリースの「ハジマリ」。新型コロナウイルス感染症拡大を受け卒業式を行えなかった卒業生に贈る歌として作られた
そんな孤立した状態での毎日、かなり辛かったのではないでしょうか?
そうですね。本当はみんなと仲良くしたいんだけど、素直になれずに「仲良くしてやるか」って上から目線で意地はって。虚勢をはり続けていました。
1日1日苦しみながら、ただひたすら生き抜いてた感じでした。ちゃんと俺のせいなんですけどね。
孤高のラッパー「般若」との出会い。独りじゃないと思えた
HIP HOPやラップの世界に進みたいと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
中学校3年生くらいのときに聞いた「般若」さんの楽曲が大きなきっかけになりました。
当時、KICK THE CAN CREW(キックザカンクルー)さんやRIP SLYME(リップスライム)さんなど、いわゆるポップHIP HOPが流行していて、よく聴いていました。これらのグループのように複数名で活動するのが一般的だった中で、般若さんはたった一人で歌っていたんです。
しかも歌詞の内容も「世界はお前が大ッ嫌い 味方は居ない」というものだった。これまで、味方はいるよって曲はあったけど、こんなこと言うんだ!って衝撃を受けて。般若さんも独りやっちゃって思ったら、すごく自信になったんです。
当時の自分の境遇と重ね合わせて、俺だけじゃないんだなって勇気付けられました。
そこから、般若さんもHIP HOPも好きになりました。
まだ宮崎ではラップ文化も少なく、YouTubeなども今のように盛んじゃなかったと思いますが、どのように技術を高めていったのでしょうか?
2013年に初めて出場したMCバトル「ULTIMATE MC BATTLE(UMB)」の宮崎大会で出会った同じ高鍋出身の「ぶーちゃん」に韻の踏み方を教わったり、サイファーと呼ばれるフリースタイルのラップをし合う遊びをしたりしていましたね。
月1回だったのが、週1回になって毎日になって。自ずと鍛えられていった感じです。
そこから県内外様々なMCバトルで頭角を現し、日本一を決める大会「KING OF KINGS」では2016年、2017年と続けて優勝。史上初の2連覇を収められました。また、全国版のテレビ番組にもご出演され、2017年にはファーストアルバム「四畳半」を発売。同年、初のワンマンライブを渋谷で開催されていらっしゃいます。
全国的に実力が認められ、心に響く等身大の歌詞やラップ技術に魅了されるファンもどんどん増えていきました。どのようなお気持ちでしたか?
ラップを始めるまで、誰かに必要とされることが一度たりともなかった。
でも、ラップで俺の中の正解を歌っているものに共感してくれる人がいて、感動してくれる人がいる。人生で初めて、自分を必要としてくれる人がいることが、とても嬉しかったですね。
未だに、これだけの人が支持してくれるって信じられないくらいです。
ファンの方は、どんな方が多いのでしょうか?
本当に幅広い層の方に応援していただいていると感じています。
この間鹿児島県のホールでライブをした際には、80代くらいの方が来てくださって「もうちょっと長く生きようって思いました」って言ってくれたんです。
めちゃくちゃ素敵だなって思いましたし、ものすごくやりがいを感じましたね。
宮崎県在住ラッパーとして「武道館」を目指して
音楽活動をする上で、都内を拠点に選択することもできるかと思いますが、なぜ宮崎県を拠点にされているのでしょうか?
33年間過ごしてきた、この街が落ち着くし、大好きなんです。元々、人混みが苦手なのもあって、ゆったり過ごせる宮崎を選んで生きています。
あと、週8でラーメンを食べるくらい、ラーメンが大好きなんですが、宮崎県は全国で一番ラーメンが美味しい場所だと思います!
楽曲制作に宮崎での日々が影響を与えている部分はありますか?
全てですね!
ラップは、自分の生い立ちやリアルを歌うもの。自ずと宮崎での日々や身の回りのことについて表現しています。
MVも宮崎を舞台に描かれることがほとんどです。
確かに多くのMVに、宮崎の街並みが登場していますよね。
宮崎県出身の芸人とろサーモン久保田さんが出演されているMVも拝見しました。どのような経緯で共演に至ったのでしょうか?
テレビ朝日の番組「フリースタイルダンジョン」を見た久保田さんが、SNSで「すごく良かったです!僕も宮崎出身なんです」とDMをくれたことがきっかけで繋がりました。
その後、一緒に飲みに行ったり、イベントが一緒になったりもして。
父について歌った楽曲「クソ親父へ」のMVを撮る際に、曲のイメージに久保田さんがピッタリだなと感じ、オファーしました。
楽曲「クソ親父へ」では数々の思い出とともに、父への想いが綴られている。宮崎市清武町出身の芸人 とろサーモン 久保田かずのぶさんが父親役を演じる
ラップをきっかけに、宮崎という繋がりが縁になり、作品に繋がっていったんですね。
今後のGADOROさんの目標を教えて下さい。
武道館でのライブを実現したいです。宮崎県に住みながら、武道館にいった方ってまだいないですよね。
また、2024年6月2日(日)には、宮崎県の武道館とも言える「宮崎市民文化ホール」でライブをします。これまでLIVEに来たことがないという方も含めて、ぜひたくさんの方にお越しいただきたいですね。
【※チケットは完売しています】詳細はこちらから https://gakuon.co.jp/ec/html/products/detail/243
お仕事必需品は「ノート・マスク・帽子」!休日も韻やリリックを考える
お仕事の必需品を教えてください!
まずはノートです!常に韻を考えてノートに記録しています。1単語につき20個考えるっていうのを毎日やっていますね。
例えば最近だと、「愛のスコール」で韻踏みたいなぁって思って、考えてました。次のアルバムとかに入るかもしれないですね!
あとはマスク。マイク・高鍋大使・高鍋の町花が描かれたマスクは、GADOROの公式グッズとして発売しています。
最後に帽子です。
いつも10個ぐらいはバッグにいれて持ち歩いています。トータル100個くらいはあるかと思います。
全国にツアーやフェスで回るなどとてもお忙しいと思いますが、休日にリフレッシュしたい時はどのように過ごしていますか?
常に韻やリリックを考えています。それがリフレッシュにもなるんですよね。
ラップこそマジになれるもの。大好きだから信じ抜けた
GADOROさんのYouTubeの紹介文の中に「自分は社会不適合者だけども、ラップという道は信じて疑わなかった」という表現がありました。なぜそこまで信じ抜くことができたのでしょうか?
ラップに出会うまで、勉強も野球も大したことなくて。野球も好きだとは思ってはいたんですが、ラップに出会ってからは、あぁ好きじゃなかったんだなって思えるくらいでした。
誰から教わるでもなく、韻や比喩表現を考えているうちに、自然に楽しくなっていって。あ、俺今マジになるもの見つけられてる。マジになるものって、コレや!って思うことができました。
単純に好きすぎるからこそ、それが自ずと信じ抜くことにつながっていたんだと思います。
若者の中には、GADOROさんのようなラッパーを目指している方もいるかと思います。どんなことに取り組めばいいのか、アドバイスをいただけますでしょうか?
まずはモノマネから入るといいと思います。そこから、自分の誇れるものや唯一無二のオリジナルを見つけることが大事です。
世の中のラッパーたちの中で、ここだけは負けない!っていう部分を探して欲しい。例えば、韻の量や文字数など、これだったら日本一だなって思えるものを探すことが大切です。
ありふれたラッパーの一人になっちゃったら、ラップもおもしろくなくなるんで。
絶対的なオリジナルがあれば、全てに自信がついてくると思いますよ。
GADOROさんの場合、そのオリジナリティはどんな部分になるのでしょうか?
ラッパーって、金のネックレス着けて良い車乗って、といったように高級できらびやかな世界を歌うことが多いんです。
でも俺は、自分の身の丈を歌い、等身大の自分をさらけ出している。弱いところも情けないところも、恥ずかしいところもダサいところも楽しいことだって、全部投影しているんです。
そんな飛距離を、日本一の韻の量で歌うことができていると自負しています。唯一無二の存在でいられるよう、これからも自分のすべてを等身大でさらけ出していきたいですね。
楽曲「ここにいよう」- GADORO(Prod.DJ RYU-G)のMVは、独立後初めて地元・宮崎で撮影された。等身大で生きる自身の姿や地元・宮崎への想いが刻まれている
最後に、宮崎の若者へメッセージをお願いします。
生きていたら、不安になることも多いと思います。でも不安を抱えるって、本気で生きているってこと。安心して不安になってください!
GADORO Official site http://gadoro.jp
GADORO Official X https://twitter.com/GADORO1next
GADORO Official Instagram https://www.instagram.com/gad0r0_mt
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