"自分を知る"ための時間に。株式会社MAGRIの職場体験に密着!
宮崎市立生目南中学校2年生
宮崎市立生目南中学校では、総合的な学習の時間を活用し、地元企業への職場体験を実施しています。今年度は、2024年6月13〜14日(木・金)に実施され、2年生50名が参加しました。
昨年度に続き2度目の受け入れを実施したのは、株式会社MAGRI(マグリ)です。株式会社MAGRIは2021年1月に宮崎市で設立され、「自然と人と社会の中に思いがけない出会いを生み出す」をキーワードに、マンゴーをはじめとした農作物の生産や、加工食品の商品開発・販売、コールセンター事業などを行っています。
当日の様子に密着しました。
人間性の醸成や自分を知る機会に。事業を未来へつなげるため
株式会社MAGRI代表の八田さんは、宮崎県宮崎市のご出身で、高校を卒業後13年間ショーモデルとしてご活躍された後、Uターンし起業しました。
職場体験の受け入れにあたり、生徒から事前に履歴書を提出してもらい、2日目の役割(部署)を分担。事業の意義や課題、社会人としてのいろはを伝えながら、丁寧に受け入れを実施されています。
どのような想いで職場体験を受け入れていらっしゃるのか伺いました。
八田さん「起業し、20〜50代までたくさんの方を雇用する中で、ビジネススキルよりも大事なのは"人間性"だと思いました。
人間性の良さというのは、挨拶やありがとう、相手の目を見て笑顔になれるなど、基本的なことができるということ。とっても初歩的なことなのですが、ビジネスにおいてはとても重要なことです。でも、大人でもなかなかうまくできていない人が多い。
では、どの段階で身につけておけると、仕事においても人間関係においても、皆生きやすくなるのかなと考えたときに、幼少期や学生時代だと考えるようになりました。そこで、キャリア教育の協力企業として参加依頼があり、ぜひ!と受け入れを決めました。
◯◯という職業とは何か、ということを知りたがる子が多いのですが、職業の内容以上に人間性がどれだけ大きく影響するのかをリアルな職場体験を通じて感じてほしいなと思っています。今回の経験が、大人になって実際に働くときの大きなヒントになったり、心が軽くなるきっかけになったりすると嬉しいですね。
また、職場体験を通じて自分を知るという時間にもしてほしいと思っています。履歴書を書いてもらうと、本当は得意なことなのに”これが苦手だ”と決めつけてしまっている子がいる。そんな子の特性を第三者的な視点で気付き、伸ばせる機会にしてあげたいです。私自身、一児の母なのですが、子どもたちと接することは、まるで自分を生き直しているような感覚もあるんですよね。たくさんの学びをいただいています。
農業という業界は、後継者不足にも悩まされています。人口減少が叫ばれる今、業界を未来に繋いでいくためにも、職場体験の受け入れはとても重要な機会だと感じています。」
1日目:農業の意義や課題を知りながらの作業。食と農の価値を感じる
1日目は、まず株式会社MAGRI八田代表から、事業内容の紹介、農業の意義・課題についてお話がありました。
八田さん「株式会社MAGRIは、食物・野菜・果物を育てている会社です。野菜や花をそのまま土に刺すと、芽が出てきます。生き返る力を持っているんです。毎日そんな神秘的な生き物を食べているし、その生き物で身体はできています。農業は、そんな生きているものを生きている人に提供する尊いお仕事です。
しかしながら、今農業は以下のような課題を抱えています。
・農産物生産には一定の期間が必要
・自然環境のもとで育てるので、天候に左右されてしまう
・後継者や人手不足
そして
・耕作放棄地(1年以上そこで何も育てていない田畑)の増加
も大きな課題になっています。
今日は、その耕作放棄地をならす(整地)作業をしていただきたいと思います。
中学生から定年まで、残り時間はまだまだ長いです。ぜひ社会や業界が抱える課題に気付いて、自ら世界を変えていってほしいです。仕事を通して、人間性を成長させる機会にしていただければと思います。」
早速、耕作放棄地をならす作業を行いました。
畑に立っているパイプや支柱、支柱を支える竹を撤去し、伸びきっている草の踏み込みを行いました。土の成分を変えないように、ハーブを植えて虫を寄せ付けないようにし、薬は使用しないようにしているそうです。撤去した備品や紐などは、すべて再利用するため、丁寧に取り扱うように注意しました。
お昼には株式会社MAGRIが生産する米「ミルキークイーン」を窯で炊き、1人ずつおにぎりを握り食べました。
どちらの体験も、普段なかなか体験できないもの。農業の大変さや魅力を五感で感じる時間になりました。
2日目:個々の志望や特性に合わせ、部署に分かれて作業!
2日目は、個々の志望や特性に合わせて以下の4チームに振り分けられました。
・ヤギの小屋作りチーム
・看板作りチーム
・コミュニケーションセンター事業部の古民家リノベーションチーム
・新規オープンするおにぎり店のリノベーションチーム
八田さん「今日は4チームに分かれて作業を行います。
株式会社MAGRIでは、農産物を生産し、インターネットを使って販売を行っています。その際の問い合わせ対応として、コールセンター事業を行っています。今回、生目地区の空き家をお借りして、コールセンターへとリノベーションすることとなりました。空き家の中の整理や業務用の機材の設置などをお手伝いいただきます。
また、元々うどん屋さんだった空き店舗を活用して、自社のお米と尾崎牛、小林の"だまって食べて魅卵ね”という卵を使った肉巻きおにぎりの店を作ります。そこの店舗のペンキ塗りなどリノベーション作業もお手伝いいただきたいと思います。
そして、我々が農作物を生産する畑で飼っているヤギたちの小屋作り、株式会社MAGRIの畑のシンボルマークになる看板作りもチームに分かれて行っていただきます。
作業を通じて“これ好きだなぁ”とか“これは嫌だなぁ”でもどちらでもいいので、自分を知る時間にしてください!」
▶ヤギの小屋作りチーム
体力に自信のあるメンバーが集まり、ヤギの小屋作りを行いました。
株式会社MAGRIの畑の中には、ヤギが2頭飼育されています。現在小屋がなく、紐に繋がれている状態です。畑は、近所の方のお散歩コースにもなっており、お子さんが通ることも多い場所。少し危ないなと感じていました。
そこで今回は、ヤギ小屋を作ることになりました。
ヤギは、頭が良く、しっかり作り込まないと脱走してしまう危険性があります。そこで、竹と網だけでなく、金網も貼り付けていきました。
出来上がった小屋にヤギを入れると、心なしかウキウキしている様子。キョロキョロと小屋の様子を確認する様子が見られました。
今回、ヤギの小屋作りを監修したのは、「ジョニーさん」こと日髙利浩さん。日髙さんは、株式会社MAGRIで農産物の生産を担当しています。
日髙さん「今回は、まず生徒たちと仲良くなるということを意識しました。コミュニケーションをとることで信頼していただき、その先で“農業”について知ってもらえたらいいかなって。農業は後継者が減ってきているので、今回の経験や交流を通じて、誰か一人でも興味を持ってくれると嬉しいなと思っています。
うちは、有機栽培で生産しています。有機栽培だと野菜を収穫してすぐその場で食べてもらうことができるんですよね。子どもたちにありのままの美味しさを伝えることができる。この有機栽培の魅力も次世代につながっていくといいなと思っています。」
▶看板作りチーム
看板作りチームは、クリエイティブな制作が好き・得意なメンバーで、農園の看板作成を行いました。
ただ描きたいことを描くのではなく「誰に、何を伝えるのか」八田さんによるデザインのアドバイスをいただきながら、畑の魅力が最も伝わるにはどうしたらいいか皆それぞれにデザインを考え、看板の制作を行っていました。
▶新規オープンするおにぎり店のリノベーションチーム
元々うどん店として事業が行われていた店舗。地域の人に愛される存在でしたが、閉店することになり、株式会社MAGRIがおにぎり店として事業を継承することになりました。
ペンキ塗りやニス塗りなどを手掛けました。
ジャージや体操服にペンキがついても何のその!真剣に、そして楽しそうに作業を行っていました。
生徒からは「自分たちが協力して、店を手掛けたというのがとても嬉しいし、オープンが楽しみです!」といったコメントもあがっていました。
周辺には飲食店などのお店が少ない状態。ぜひ地域の人のお茶飲み場として活用いただき、老若男女問わず交流できる場所になってほしいですね。オープンが楽しみです!
▶コミュニケーションセンター事業部の古民家リノベーションチーム
コールセンターは、古民家再生の一貫で近隣の空き家をリノベーションしました。株式会社MAGRIを応援したいという方が安価で貸し出してくれているといいます。
午前中は家具を運び出して、内部を清掃。
中が綺麗になったら、午後はいよいよ機材の導入、セッティングです。
実際に清掃や機材のセッティングを体験した生徒は「はじめての経験だったのに、ここまで自分たちで綺麗にできて、そこでみんなでご飯を食べて。協力してオフィスにすることができたことで、とても達成感を感じました!」と嬉しそうに話していました。
コミュニケーションセンター事業部を担当されている、営業担当の兵頭さんは「今は空き家が増えているこのあたりのエリア。実は明治大正のころは、このあたりがメインストリート的存在だったそうです。
企業として利益を追求することはもちろんですが、同時に自分たちが生まれ育った生目地区に少しでも役に立てたらという想いで、こちらの空き家を活用することに決めました。ちょうど以前のコールセンターが手狭になっていたタイミングで、オーナー様にお声がけをいただいた感じでした。私たちがここを活用することで、このあたりがまた盛り上がるきっかけになったらいいなと思っています。
生徒たちに地元愛って言ってもなかなかまだわからないと思います。もっと都会に行きたいって気持ちももちろんわかる。でも、空き家を自分たちでリノベーションして機材を置いてって経験、どこで暮らしていてもなかなかできることではありません。
今回の経験を通して、"古民家"とか"リノベーション"とかっていうキーワードだけでもいいので、頭の片隅に残ってくれたら嬉しいなと思います。空き家を活用したコールセンターって、とてもユニークじゃないですか。なんかそんなことをしたなぁ、おもしろかったなぁっていう感情を誰かにシェアしてくれて、未来につなげていってくれると嬉しいですね。そして、それって誰がしてるの?株式会社MAGRIって会社があってね、と波及していったら嬉しいですね。
様々な形でバトンがつながることで、いつか地元愛につながっていってくれたらいいんじゃないかなって思います。」
7月から実際に稼働する予定だという、コミュニケーションセンター(コールセンター)事業。ここをきっかけに、また一角がメインストリートとして栄えるきっかけになるかもしれません。今後の動きが楽しみですね。
生徒から株式会社MAGRIメンバーに職業人インタビュー!
作業のあとは職業人インタビュー。生徒たちが気になる質問を、それぞれの業務担当の方に投げかけていきました。
「給与はいくらですか?」「なぜ農業をやろうと思ったのですか?」といった、生徒たちの思い思いの質問が飛び交っていました。
新たな未来の選択肢を知る時間に - 生徒の声
2日間かけて、株式会社MAGRIの業務を体験した生徒たち。どのような学びがあったのでしょうか。
田丸まゆかさん「1日目の耕作放棄地畑をならす作業では、草ボーボーのところをみんなで草を踏んで平らにする作業をし、2日目はヤギ小屋を作る作業をしました。こういった空き地や空き家を活用して、この生目地区をより良い街にするために宮崎に貢献されているということを間近で見ることができ、一緒に活動もできてとても嬉しかったし、感謝の気持ちでいっぱいです。
これまで農業に触れることがなかったので、初めて知ることも多かったです。綺麗な土地に作物を植えるのかと思っていましたが、今回のように草がいっぱいな土地を耕してから作物の生産を行うことがあるんだなということを知り、とても勉強になりました。
将来ドクターになりたいという夢がありましたが、今回株式会社MAGRIさんについて知ることができ、また新たな選択肢を知ることができました。今後この経験を活かしていきたいなと思います。」
川辺創士朗(そうしろう)さん「1日目は1年以上使われていない耕作放棄地畑をならす作業を、2日目はおにぎり屋さんのリノベーション作業を行いました。リノベーションでは、ペンキやニス塗りを担当しました。少しミスをしたときも、スタッフの方が優しくアドバイスしてくださったのが印象的でした。おにぎり屋さんが地元の方に親しんでいただけるようなお店になっていくといいなと思います!
今はまだ将来の明確な目標はありませんが、今回の経験を通して"農業"に関する職業も良いなと思いました。新たな選択肢を知れる経験でした。」
普段あまり見る機会のないお仕事のリアル。実際に現場に入り体感することで、楽しみながら自分や未来の選択肢を知る時間になったようです。生徒たちにとって貴重な体験となったこの職場体験は、将来の進路選択に大きな影響を与えることでしょう。
株式会社MAGRIの皆様、多大なるご協力をいただき、本当にありがとうございました!